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(2015.5.22 管理人 記)

2011年03月07日

国際宇宙ステーション太陽面通過・余録(3月5日)

 3月5日の国際宇宙ステーション(ISS)太陽面通過の予報は2月下旬、姫路科学館から明石の井上学芸員に伝えられました。当初の予報では、明石市立天文科学館が太陽面通過のほぼ中心線上に位置していたのです。
 ところが2月25日、スペースシャトル・ディスカバリー(STS-133)が打ち上げられます。ISSにシャトルがドッキングするときは大抵、軌道変更が行われます。今回も多分……と思っていたら、案の定。予報中心線が天文科学館を外れたのを知った瞬間の井上さんの脱力ぶりといったら、言葉もありませんでした。

 しかし、これであきらめないのが星好き(というか物好き)です。

 実は今回、ロシアのソユーズ・プログレスにヨーロッパのATV、日本のこうのとり(HTV)にアメリカのスペースシャトルがISSに集合中。シャトルがまもなく引退なので、この顔ぶれで宇宙船が集合するのは最初で最後。しかし残念ながら期間中にISSが日本上空を朝・夕方の可視時間帯に通過する予報はありませんでした。
 3月5日の太陽面通過は、日米欧露の宇宙船がそろったISSの姿をとらえる千載一遇のチャンスなのです。

 白状すると私、最初はさほど乗り気ではありませんでした。
 手持ちの機材で写真は難しいですし、明石で見えるならともかく、0.8秒の現象を追いかけて遠征となると、うーん。
 しかし、ISS観測のベテラン、倉敷科学センターの三島さんにけしかけられます。
太陽面通過は敷居は低いですよ。肉眼観測でいいなら、減光フィルターかけた7×50の双眼鏡でもできますし。
 そうか双眼鏡でも見えるのか。これでその気になるのですから尻軽すぎます自分。

 予報サイトを確認しながら情報交換していたのですが、そのさなか。

宇宙船大集合のISS、太陽の前を通過 観測わずか1秒」(2011年3月4日 asahi.com)

 なんだって〜!
 私は東山正宜記者のつぶやきで、井上さんは朝ご飯を食べながら読んだ朝刊で知ったそうです。

 兵庫の通過予報は確認していたのですが、遠方の予報はノーチェック。まさか3月3日に関東で見えていたとは! やられた〜、先こされた〜。
 さすが、はやぶさ帰還写真を始めとする名ショットで鳴らした東山記者、お見事です。
# 国立天文台の渡部潤一さんも絶賛されてました。

 しかしこれで奮い立つのが星好き(というか物好き)たる所以。
 3月4日にシャトルがISSにドッキングしたままエンジンを噴かして軌道変更。これで当日の太陽面通過の中心線が決まります。最終的には姫路市内、山電八家駅とJRひめじ別所駅を結ぶラインとなりました。

 倉敷の三島さんは四国に渡って香川県三木町にスタンバイ。
 明石の井上さんと星の友の会の福原さんと私の3人は姫路の海べりの小赤壁公園。
 地元、姫路科学館の小関さんは私たちの少し北、姫路バイパスの別所サービスエリア。
 それぞれの場所に展開してその時を迎えます。

 小赤壁公園は、海に面した断崖絶壁の上。見晴らしは最高なのですが、上空を舞うパラグライダーが気になります。すごく気持ちよさそうに飛んでいるのですが、ISSの0.8秒の太陽面通過中に、パラグライダーも一緒に太陽面通過されたら大変。しかし上から見たら私たち、昼間から望遠鏡を空に向けている謎の集団に見えたことでしょう。

 そうそう、機材の話。
 ISSの形を狙う場合、拡大率を稼げる長焦点の光学系が望ましいのですが、私の手持ちの機材では条件に合うものがありません。MT-130(f=795mm)は架台と合わせると重量10kgを軽く超えるうえ、かさばるので駅までの移動が無理。ボーグ100アクロマート鏡筒(f=640mm)は、対象が明るいと色収差で解像度が落ちます。ミニボーグ60ED(f=350mm)では拡大率が足りません。
 ということで、井上さんのボーグ76ED(f=500mm)を拝借。自分の100アクロ鏡筒の筒を持っていって、観測地でレンズだけ付け替えました。なんというかBORGならではの荒技です。

 私は最初、動画の撮影を予定していたのですが、ニコンD5000の露出調整がうまくいきません。望遠鏡をつけた状態ではカメラ任せのオート露出しか出来ず、多少の調整は効くのですが、なかなか安定しません。
 隣に望遠鏡を並べていた井上さんも動画を撮るというので、こちらは写真撮影に切り替えました。D5000のモータードライブは最速4コマ/秒。0.8秒中に何コマかは写るでしょう。たぶん。
 似たような動画を2つ撮るよりは、動画と静止画の2種類の成果が出た方が、後でいろいろ使い出があるはずです。

 76EDはテレビューF2経緯台に乗せ、日周運動による太陽の移動量を見込んで構図を決定。太陽は2分間で直径分移動するので、逆算してカメラを向ければ、太陽面通過時に画角の中央に太陽が来るはずです。

 フィルターは2009年の小笠原沖皆既日食の時に作ったアストロソーラーフィルターを流用。もともとミニボーグ60EDに合わせたものなので、有効口径は68mmに絞られます。これは仕方がないところ。

 眼視用にはHα太陽望遠鏡P.S.T.を持っていきました。
 これで写真を撮れれば格好いいのですが、相当無理をしないとカメラが付かない鏡筒なので、端から眼視専用と割り切りました。ISSの通過時は、P.S.T.を覗きながら、レリーズで76ED+D5000のシャッターを切ります。二兎を追う計画ですが、大丈夫か自分。

 福原さんがノートPCに時報読み上げソフトを入れて持ってきてくださいました。
 先のasahi.comの記事に掲載されている動画では、ほぼカウントダウンの時刻通りにISSが通過しています。予報はかなり正確なことが予想されましたが、秒未満の現象なので、時計を確認している間に見逃したら悲劇。耳で時刻を確認できるのはとても便利でありがたかったのです。個人的には今回の観測の最優秀アイテムでした。

 そんなこんなで、観測は成功。
 四国遠征の三島さんも、ご近所・別所SAの小関さんも観測に成功したとのこと。

倉敷科学センター・三島和久さんの写真 ディスカバリーらしきシルエットが写っています。さすがです。
太陽の前、0.5秒で通過 大にぎわいのステーション」(2011年3月5日共同通信)※三島さんの写真(3月7日追加)
・「太陽と重なった瞬間を撮影 国際宇宙ステーション」(2011年3月6日山陽新聞)※三島さんの写真
・「太陽とランデブー 国際宇宙ステーション撮影」(2011年3月6日神戸新聞)※姫路科学館・小関高明さんの動画
・「太陽を通過するISS(国際宇宙ステーション)の画像 到着です」(2011年3月7日NHK「かぶん」ブログ)※小関さん・三島さんの写真(3月7日追加)
明石市立天文科学館・井上毅さんの動画
・「国際宇宙ステーションの太陽面通過」(2011年3月7日とほり天文台ブログ)※井上さんのブログ(3月7日追加)
・「宇宙ステーション:とらえた0.8秒 太陽通過の様子、姫路市内で観測/兵庫」(2011年3月7日毎日新聞)※井上さんの観測記事(3月7日追加)
・「国際宇宙ステーション太陽面通過」(うち)

(以下はVia.星の情報)
月太陽空写真:ISS+スペースシャトルの太陽面通過 ※富山での観測 高解像度のすばらしい写真。
・「ISS太陽と一瞬の交錯 高岡・深島さん撮影に成功」(2011年3月6日読売新聞)

 しかし、これだけ地上から狙われているとなると、宇宙で何かを企んでもすぐに発覚してしまいそうです。
posted by ふくだ at 01:03| Comment(6) | TrackBack(0) | 星空観望 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
うはは。
確かになんかやったらばればれやな。
にしてもみなさんすばらしい根性ですねー。
そうかあ、シャトルがいなくなっちゃうんだったら、いい記念だったね。晴れてよかったね。
Posted by api at 2011年03月07日 10:26
はじめまして
いつも楽しくブログを拝見させて頂いております。

この記事を読んで私もISSの日面通過や月面通過に挑戦したいと思ったのですが、予報情報などの取得方法がいまいちわかりませんでした。

Googleマップにプロットを追加するなど、方法は様々あるようなのですが…

もしよろしければご教示いただけると幸いです。

参考までに私の所有する機材はBORG77EDIIとGP2赤道儀、アストロソーラーフィルターです。
現在、静岡にある大学の天文研究会に所属しております。
Posted by ひっきー天体観測所 at 2011年03月07日 11:54
いつも、ブログを拝見させていただいております。

花北観望会ではいつもお世話になっております。
先日の観望会で、うちの望遠鏡を使ってくださりありがとうございました。(オリオン大星雲・カストルなどを見せていただきました。)


ISS太陽面通過が、うちの近所であったと知ってびっくりしました。
写真にも私の知ってる場所が・・・
なんだか嬉しくなってしまい、ついコメントしてしまいました(^^ゞ

どなたかが昨年の日没帯食についてのコメントをされていましたが、うちの中学生ソムリエが撮影したものでよろしければ、ブログに載せてありますのでどうぞ御覧ください。
撮影場所は、小赤壁公園の下の浜辺(福泊マリンベルト)です。↓

http://robohosirobo.blog69.fc2.com/page-4.html
Posted by nono at 2011年03月07日 20:01
apiさん
贅沢をいえばディスカバリーが判別できる写真を撮れるとよかったのですけれども、ISSのシルエットが分かるだけでも上出来です。

ひっきー天体観測所さん
いらっしゃいませ。
私が使ったCalskyというサイトは自分でも使い方をきちんと把握していないのですが、
ISS Transit Predictions というサイトがあり、
http://pictures.ed-morana.com/ISSTransits/predictions/index.html

「星が好き」さんの所に日本語の解説があります。
ISSの天体通過予報サイトの使い方
http://homepage2.nifty.com/milkyway/iss_transit.html

DEMデータはリンク先にないようですが、USGSのサイトから入手できます。
http://www1.gsi.go.jp/geowww/globalmap-gsi/gtopo30/gtopo30.html
Posted by ふくだ at 2011年03月07日 21:33
nonoさん
いらっしゃいませ。こちらこそお世話になってます。
モリモトおじさんには「ふくださんは他人の望遠鏡を使って楽しむのが上手だねぇ」と言われておりました。今回のISS太陽面通過写真も借り物の望遠鏡です。

日没帯食、雰囲気のあるいい写真ですね。私も見たかったのですが、じゅうぶん楽しませていただきました。
Posted by ふくだ at 2011年03月07日 23:46
はじめまして。
面白いですね。
動画や写真もさることながら、撮られている方々の熱意がひしひしと伝わってきました。
物理に関するサイバー研究会を主催してまして、最近剛体の回転運動に関連して宇宙船の姿勢制御のはなし(それほど突っ込んだものではありませんが)が出てきたので、シャトル都のドッキングのくだりは、起動変更の理由を考えてしまいました。
よければりきがく研ページにもお越しください。
Posted by りきがく研究会 at 2012年05月19日 21:05

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