明石市立天文科学館の特別展「宇宙のペーパークラフト展」開催中です。はやぶさの帰還以降、模型業界もちょっとした宇宙ブームの感があります。しかし天文・宇宙を題材とした模型はこれまで商業的に採算が取れる分野とはみなされず、市販のキットもさほど種類は多くありませんでした。
しかし、「無ければ自分で作る」のが趣味人です。
紙を材料としたペーパークラフトは、試行錯誤もしやすく、また印刷表現で細かい塗装も再現できることから、腕によってはプラモデルに匹敵する模型を作ることができます。こうしたペーパークラフトの特性を生かして、宇宙ファンは次々とロケットや人工衛星・探査機や有人宇宙船の型紙をつくってきました。
パソコンとプリンタの普及が型紙制作のハードルを下げ、インターネットの普及によって自作の型紙が公開され、模型を作る楽しみと所有する喜びが広く共有されてきました。海外の宇宙ペーパークラフトファンの情報収集力は凄まじく、よほどの専門書を紐解かないと載っていないような機体すら立体化し、英語圏の人たちが日本語の型紙すら紹介し、独自に改良パーツを生み出してしまうほど。その熱心さには舌を巻くばかりです。
ハサミとカッターナイフ、木工用ボンドなど、さほど特殊でない工具で簡単に工作できることから、ペーパークラフトは教材としての側面も持って来ました。各地の科学館や博物館の工作教室では、当たり前のようにペーパークラフトがプログラムに組み込まれています。こうしたモデルでは、模型としての再現度もさることながら、工作を通じて、あるいは完成品を観察することで、機能や構造を学ぶことが出来るように配慮されています。
子ども向けに簡便にアレンジされたものから、マニアに対する挑戦状のような複雑なものまで、多種多様なモデルが用意されています。
今回の「宇宙のペーパークラフト展」は、国内の3人のペーパークラフトビルダーの作品を軸に構成されています。
出展物の中核をなすのが、中川義通さん作成のロケット模型群。国内外の幾多の型紙から、魔術師的な驚異的な工作力で生み出された綿密精細なディティールは息を呑むばかり(=写真/天文科学館に到着、開梱時のもの)。
近代ロケットの祖というべきドイツのA-4ロケット(V-2)から、旧ソ連のスプートニク、ボストーク、ソユーズ、プロトン、アメリカのマーキュリー、ジェミニ、アポロ計画、スペースシャトルに至るまで数十機の模型がそのまま宇宙開拓史を構成しています。すべてのペーパークラフトが1/100スケール(1mを1cmに縮小)で統一されているので、月ロケット・サターンVの巨大さや、日本発の人工衛星「おおすみ」を打ち上げたL-4Sロケット(アポロ11号の翌年)の小ささなどを見るがままに実感できます。
マニア的には、旧ソ連のシャトル「エネルギア=ブラン」や、中国の有人打上げロケット「長征2号F」、韓国の「ナロ号」、アメリカ民間の「ファルコン9」といった機体の立体物を楽しめるのも見所です。
JAXAの阪本成一さんの出展は、国立天文台時代に制作した「動く!望遠鏡のペーパークラフト」が中心。JAXAの広報担当として顔を知られている阪本さんですが、実はその筋では有名な型紙製作者。とにかく手を抜かない方で、飾って眺めるだけでなく、実際に動く部分は動かせるというのが阪本さんの型紙。望遠鏡なら架台が縦横に動き、人工衛星ならフェアリング搭載時から宇宙空間で一通りの機器が展開するまでを忠実に再現出来ます。
宇宙ファンの間で有名になったのは「『はやぶさ』ペーパークラフト熟練者バージョン(β版)」で、あまりの精細さに「組み立てられる人はいないんじゃないか」という噂が流れたほど。
# ちなみに組み立てて動かしたのがこちら。
不肖ながら私もいくつか出展させて頂いております。
・ティコクレーター手作り立体地図
・「かぐや」ペーパークラフト(1/32)
・国立天文台ペーパークラフト月球儀「その5」
・空飛ぶビール缶(HTV「こうのとり」)
・ボトルはやぶさ
・HTV「こうのとり」ペーパークラフト(1/25)
などなど。中川さん、阪本さんに比べると何とも統一感のないラインアップですが、面白そうなら何でも作ってみる性格でして。
それから、中川さん出展のロケット群のうち、L-4S,M-4C,M-3C,M-3H,M-3S,M-3SIIと続く、東大宇宙航空研/宇宙科学研究所の個体ロケット群は私の型紙を使っていただいています。型紙設計者の私が「自分が作ったよりずっときれい」と舌を巻いた逸品です。
そんなこんなの「宇宙のペーパークラフト展」。4月8日まで開催中ですので、ぜひぜひお立ち寄りください。






こんなに増えているんですね。楽しみ〜