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(2015.5.22 管理人 記)

2014年08月28日

地名を読む

 地名で災害の危険性が分かるような話が出ています。
 ある程度は正しい面もあるのですが、地名のみで判断するのは要注意です。

 地名の解釈で漢字の意味にとらわれるな、というのは地理を学んだ学生時代、はじめの頃に教えられました。

 日本はもともと文字がない国で、中国から漢字を移入し、そこから平仮名や片仮名が出来ました。
 文字が入る前の地名は口頭伝承でした。

 漢字が入った当初は、固有名詞は当て字で表記されました。いわゆる万葉仮名で、たとえば「フクダ」は「富久太」などと書きます。漢字の意味は無視です。
# 「夜露死苦」に似ていなくもないですが、万葉仮名は字面を選びません。

 この場合、同じ地名でも複数の書き方が出来ます。フクダなら「富久太」の他に「布九大」や「不苦陀」もあり。また地名の長さによっては、一文字で済んだり四文字になったりと、行政文書をつくる上でいろいろ不便が出てきました。

 そこで和銅6(713)年、「畿内七道の諸国郡郷の名は 好字を着けよ(畿内七道諸国郡郷名着好字)」と定めます(続日本紀)。
 また延長5(927)年に完成した「延喜式」で「凡そ諸国の部内の郡里等の名は 二字を並び用い 必ず嘉名を取れ(凡諸国部内郡里等名、並用二字、必取嘉名)」と定めました。

 つまり当時の国は「地名に用いる字は好い字を使いなさい」「地名に用いる字は二文字にして縁起のよい名にしなさい」と言い出したのです。二字・嘉名は中国に倣ったのでしょう。旧国名や郡名が二文字になるのはこの時から。現在も二文字表記の地名が多いのはおそらくこの影響です。
 好い字を使えということでは、字面選びの他に、「葦田」が「悪し」に通じるので「吉田」にしたなどの改変もあります。
# 国家レベルで開発業者的地名改変をやっていたという……とはいえ昨今の安易な地名改変は私も反対です。



 漢字の当て方で読みが変わってしまった地名もあります。身近なところでは神戸の六甲山。
 もともと難波あたりから見て大阪湾の向こうということで出来た「ムコ」という地名に、「武庫(ムコ)」の文字が当てられます。六甲山も「武庫山(ムコヤマ)」と書かれていたのが、江戸時代に「六甲山(ムコヤマ)」の表記が登場し、漢字の音読みに引っ張られて「六甲山(ロッコウサン)」となったとする説が一般的です。
# 六甲山は最近の事例ですが、奈良・平安の二字・嘉名をきっかけに呼び名が変わった地名も少なくありません。

 「六甲」をいくら眺めても「向こう」の意味は出てきません。
 水害の後なので田や沼や沢など水っぽい地名が要注意とされているようですが、さてそれは本当に文字通りの意味なのか、もしかすると秘められた歴史があるのか、調べてみると面白いかもしれません。
 地名の解釈は丁寧にすべきですが、地名を掘り下げることで地域への理解が深まるなら素晴らしいことです。

 地名を調べるときは、平凡社の「日本歴史地名大系」、角川書店の「角川日本地名大辞典」が地名辞典の双璧で、大きな図書館には置いてあると思います。
 神戸の人なら神戸新聞総合出版センターの「新 神戸の町名」(神戸史学会)が手軽でおすすめです。

・参考:「歴史地名」もう一つの読み方「第2回 地名の表記と変遷」(1)〜(3) 大矢良哲


posted by ふくだ at 22:04| Comment(0) | 雑記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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