塩屋天体観測所の雑記帳はhttp://stelo.sblo.jp/に移転しました。
今後はこちらの旧サイトを更新しません。引き続き移転先でよろしくお願い致します。
(2015.5.22 管理人 記)

2015年01月21日

劇場版 神戸在住

 「劇場版 神戸在住」を見てきました。
 TVドラマ版と基本的に同じストーリーですが、劇場版が96分でTV版が77分。TVでは放映されなかった場面が追加され、より物語の輪郭がくっきりと浮かび上がっています。

 TVドラマ版では気にならなかったのですが、劇場版の桂は内向的な面が強く出ている印象。彼女は引っ込み思案だけど本来しっかりしてる人なんですよね。ピックアップしたエピソードからそう感じてしまったのかな。

 「神戸在住」TVドラマ/映画化と聞いて不安しか思い浮かばなかったのは、映像化するのが難しいのが分かっていたから。スクリーントーン、いや定規さえ使っていないような手描きのコマ。主人公の日常の小さな起伏を掬い上げるていねいな描写。心の奥底に横たわるざわめき。そして時に描かれる深い喪失と再生。
 アニメだろうが実写だろうが「どうやっても雰囲気壊れるわこれ」と思うほどに、漫画ならではの表現で描かれた作品でした。

 でもTVドラマ版の冒頭を見て感じたのは作り手への信頼感。確かに設定はいろいろ変えているのですが、でも原作はしっかり理解されてた上でやってる。これは大丈夫。ということで劇場版も見てきました。

 原作「神戸在住」の時間軸は、主人公の桂が大学2年生からスタートしています。発表は1998年から。劇中の年代は明示されていないのですが、入学は1996年もしくは97年、卒業は2000年前後。描かれる街並みにはところどころに地震の爪痕が残り、桂の友人も被災していて、震災のエピソードも友人からの伝聞の形で描かれます。
# 全巻通じても強い印象を残す回で、私は一度読んだあとしばらく読み返せませんでした。

 震災のドラマを描くのなら、ここを軸に展開も出来たはず。ですが、あえてそうしなかった。

 仮に震災を軸にしなくても、原作当時の神戸と今の神戸では、街並みがずいぶん変わってしまったので、どのみち原作通りには撮影のしようがない。そもそも描かれた時代を忠実になぞっても、原作を読んだ人以外には「なぜ今これを」という感覚が残ると思うのです。

 バックグラウンドには震災が描かれているけれども、「神戸在住」は震災そのものではなく、震災を経た神戸の街とそこに生きる人々の物語。だからこそドキュメンタリーならなんぼでもつくれる地元TV局が震災20年の題材に選んだのだろうし、だからこそ時間軸をシフトして、今に通じる物語として描き直した。

 映像で描かれる神戸はひたすらにきれいな、よそ行きの装いとすら思える街並みです。けれどもきれいな街並みの底にある、街の経験した痛みと悲しみにもさらりと触れている。
 触れても深追いしないことで、かえって伝わるものがある。

 結果的に、映像化にあたっての一つの「正解」になったと思います。

 原作を大事にしている人はそもそも無理という人もいるでしょうし、それはもう仕方がない。
 エピソードを詰め込みすぎと思うところもあるし、早送り気味だし、荒削りの点もあります。
 心に染みる人とそうでない人が分かれると思います。
 誰彼にも遠慮なく薦めるには若干のためらいがあります。

 けれども、いい作品でした。
 期待していなかった分の反動もあるのかもしれませんが、私にとっては十分です。

 シネ・リーブル神戸で見たのですが、客席のあちこちから涙をこらえてる様子が伝わってきました。朝一の上映しかない作品を選んで見に来る層なので、もともと好きな人が多いのでしょうけど(それにしては年配の男性が多かったな)、それを差し引いても感じるものは多かったのだと思います。

 映画館を出ると周り中が舞台なので、余韻に浸りながら三ノ宮から神戸まで歩いてしまいました。昼ご飯たべるの忘れてたよ、腹減った。


posted by ふくだ at 23:45| Comment(2) | 読書録・映画録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いろんなところで上映してほしーーい。
Posted by あぴ at 2015年01月23日 23:07
上映館がむちゃくちゃ少ないでのう。
http://www.is-field.com/kobe-zaiju/

神戸ですら朝一回しか上映がないから難易度高いですよ。

TVドラマ版も後から放送が追加されてるのでこちらの方が可能性高いかも。
http://www.sun-tv.co.jp/kobe-zaiju
Posted by ふくだ at 2015年01月23日 23:46
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。